2007年06月18日

なぜ家族間殺人?


また嫌な事件が連続して起こりました。
妻が夫を殺し、夫が妻を殺し、子供が父親を殺し・・・、
なんだか、こう書いているだけで嫌な気分になります。

それぞれの事件の背景には、
暴力や利害や憎悪が渦巻いているのでしょうが、
ここで、各事件について云々するつもりはありません。

ただ、“家族の崩壊”が殺人に至るところまできてしまっているのは悲しい現実であります。

家族崩壊といえば、50年以上前、名作・『東京物語』で、小津安二郎監督が見事に日本の家族崩壊を描いております。

物語は──、
田舎に住む老夫婦が、東京に出てきて、独立して生活する子供たちを訪ね歩きます。
しかし、子供たちは、それぞれ社会的で成功しているにもかかわらず、年老いた夫婦をあまりこころよく思いません。
老夫婦は子供たちの間を渡り歩きながら、家族とは、夫婦とは、子供とは、と葛藤し・・・最後に田舎に帰って、妻に死なれ、孤独となった老人は、人の一生とは何なのだろう・・・と思い返します。

随分と昔に名画座の小津安二郎特集で観た作品ですが、
ラストの老人の姿は、小津監督のローアングルのカメラ演出で、この上なく悲しい人生の孤独、を浮き彫りにしていたのを鮮烈に思い出されます。

それと、年老いた親に対して冷たいとはいえ、子供たちにも、それぞれ事情があり、滑稽な人間模様が描かれていたのは、映画の救いとしてあったように記憶しております。

50年以上前、
老夫婦に冷たい、という家族崩壊がすでにありました。
そして、今、
家族の崩壊は、肉親への冷たさ、を通り越して、殺人にまで至っております。

ここが問題なのであります。

おそらく、小津監督の『東京物語』は、
子供の冷たさをシニカルに捉えながらも、そうであってほしくない、というあたたかさが作品の中に込められていたように思います。

自分さえ良ければいい、という風潮は、
50年前といわず、有史以来、人間の醜い欲、として存在していたのは確かでしょう。

それを止める時代、が必要です。
このような事件が続き、誰もが良いとは思っていない筈です。
良識ある人々が、今こそ、気づくべきです。

日本には、美しい生き方の美学がある事を!


posted by 井上誠吾 at 09:52| 日記