2014年04月09日

南木顕生氏・蟹江敬三氏、への悼詞





先週末、突然、二人の訃報が入った。

最初は、脚本家・南木顕生氏。
死因は急性大動脈解離。49才だった。

続いて、俳優・蟹江敬三氏。
死因は胃がん。69才だった。




南木が、死んだ・・・?
訃報を聞いた時は・・・信じられない半面、仕方ないな、不摂生をしていたんだから・・・、
と納得してしまった。

そして、
「早過ぎるだろ、バカヤロー」
と思わず、胸の内で呟いた。

彼は──、
脚本家の故・神波史男先生(誠真会館 物故特別名誉顧問)の弟子であった。
神波先生に紹介されて以来、20数年の付き合い。
彼が初監督した映画「ニート・オブ・ザ・デッド」の公開へ向けて動いていた最中の死であった。

そして、2年半前には───
映画「リトルウイング 3月の子供たち 」
に企画協力で参加してくれていた。

不躾というか、無作法というか、天の邪鬼というか。
思わず苦笑するほど、困ったヤツであった。

「リトルウイング 3月の子供たち 」は、
当初、小生と彼との共同脚本で進めていたのだが・・・、
何かにつけて方向性が違い、意見やアイデアを出すのではなく、批判や突っかかった物言いばかりするので、
「お前は脚本から離れて、黙って見てろッ」
とホン作りから外した。

喫茶店で打ち合わせをしている時など、
貧乏ゆすりはするし、コーヒーは溢すし、タバコを人の顔に吹きかけるし、ついでに咳も吹きかけるし、周りの客の迷惑も顧みずカン高い声で叫び出すし・・・いやはや困った男で。

そんな奴だから、製作会社だの、芸能事務所だの、劇場だの、あちこちで「出入り禁止」を宣告される始末。

「お前、それで、よく生きていられるな」
同情と皮肉を交えて言うと、
「別にいいじゃん」
とタバコを吹かし、ヤニで汚れた歯を見せながら、不遜に笑う。

実に、可哀そうなヤツだ。

それでも・・・なぜだか、会いたくなり、
「飲もうか?」
というと、どんなに遠くても指定した場所にやってくる。

南木よ・・・。
生きている間、いろんな人たちに嫌われたなぁ。
お前さんほど、人に嫌われたヤツは見たことがないよ。
しかし・・・、
俺は、嫌いじゃなかったぞ。
きっと、お前さんは、
心の奥底に、純粋な気持ちを宿していたにもかかわらず、それを素直に表現することが苦手で、天の邪鬼を演じていただけなんだ。
と、俺一人くらい、お悔やみで褒めてやるか。

今頃、神波先生から、
「来るのが早いよ、バカヤロー」
と言われているんだろう。
ま、天国で、二人して、死ぬほど美味い酒を飲んでくれ!
献杯!





蟹江敬三さんとは、
30数年前、「影の軍団V」というテレビドラマのレギュラー仲間として共演をした。

撮影現場でも、待ち時間でも、食事時間でも、
多くを語らず、静かに佇んでいるのが、蟹江さんであった。
しかし、
演技に入ると一変、
内なる魂を爆発させるようかのようにエネルギーが炸裂!
その演技があまりに魅力的なので、自分の出番がない時は、そっと撮影所のセットに入り、蟹江さんの演技を勉強させて貰ったことが何度もある。

いつでも、どこでも、演技以外は寡黙であった。

もう20年程前になるが・・・。
新宿で、某映画を観たあとだった。
期待外れの映画にガッカリしながら表へ出ると、蟹江さんと出会った。
どうやら、同じ映画を観に来られたようだ。
感想を聞かれたので、面白くない旨を正直に述べると・・・、
「時間ある?」
と蟹江さん。
実は、家の用事があった。
しかし、先輩に言われると・・・しかも蟹江さんにである。
「あります」
と答えるしかない。
すると、
「コーヒーでも飲もううか?」
蟹江さんは感想を聞いたことで、もう映画は観なくてもよい、と判断したのか、近くの喫茶店へと誘ってくれた。

そして、コーヒー一杯で約2時間近く話をした。

あの寡黙な蟹江さんが・・・!
よくぞ、話をしてくれたものである。
あの頃、小生は脚本を書き始めており、そのことを伝えると、細い目をさらに細くして、
「いいじゃない、頑張って」
と何人かの脚本家の名前を出して話が進んだ。

2時間近くも喫茶店に居れば、最後のほうでは会話も途切れるもの・・・。
小生は、とっくに家の用事の時間が過ぎており、
蟹江さんが「そろそろ出ようか」と言い出すのを待っているのだが・・・それが、言わない。

会話が途切れても・・・、
そのW間Wを楽しんでいるかのようにも見えてくる。
小生も、それなら、と用事のことなど忘れて、蟹江さんとの共有時間を楽しんだ。

蟹江さん・・・。
あの時、なぜ、2時間近くも話してくれたんですか?
やがて、自分もあの世に行った時に聞いてみよう。
推測だが、
「面白くない映画を2時間観るより、誰でもいいから面白い話を2時間したほうがいい、と思ったのかなぁ」
ハニカミながら、軽口を叩いてくれそうな気がする。




南木顕生氏、
蟹江敬三氏、
両氏の訃報に接して、
お二人が安らかに眠られることを心から祈っている。

合掌!



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posted by 井上誠吾 at 09:35| 日記