2008年08月09日

光と影 汚れなき庶民

北京オリンピックが華々しく開会されました。

今回、開会式の総合演出を「HERO」や「LOVERS」などの娯楽大作映画をヒットさせているチャン・イーモー監督が担当すると知り、興味を持っていました。
さきほど、開会式のダイジェスト版を見て、
さすが、チャン・イーモー監督だな、と視覚的なスケールの大きさに感心しました。

しかし、
その華々しい“光”の裏には、暗く重い“影”を宿しています。
チベット問題、テロの問題、四川省大地震・・・そして、五輪期間中、出稼ぎ労働者を強制的に帰省させる事、等々。
華やかなパフォーマンスを見ながら、それらの件で苦しむ人々の姿が、ついつい脳裏をよぎってしまいます。

祭典の途中で「和」の人文字が浮かび上がっていましたが、
果たして、この国のトップから庶民までもが、心底から「和」を実感しているかどうか?
と、皮肉の一つも言いたくなってきました。

小生が、チャン・イーモーという名前を知ったのは、20年くらい前でした。
「古井戸」という映画で主演と撮影を担当し、なんという存在感のある俳優で、なんと力強い映像を創り出すカメラマンなのだろうと衝撃を覚えたものでした。

その「古井戸」という映画は、
水のない山奥の村で、極貧の家族が水を得ようと、様々な困難や犠牲を払いつつも、最後には井戸を掘り当てる。
という物語でした。

四川省の被災地では、まさにあの映画と同じように、極貧の中で、水を求め、食を求めて苦しんでいる人々がいます。
それを思うと、
チャン・イーモー監督には罪はないが、
国の威信をかけた華々しいオリンピックの祭典が、
欺瞞に満ちたメッキの祭典のように、
感じられてなりません。

しかし、一週間ほど前のニュースで、
強制的に帰省させられる出稼ぎ労働者の男性が、
「仕方ない、オリンピックは田舎でテレビを見て楽しむよ」
と笑って、列車に乗り込んでいた事。
さらに、
四川省の被災地で水や食べ物にも困っている筈の女性が、
「オリンピックは私たち中国人の夢だから」
と、こちらも笑って、被災の後片付けをしていた事。

二人の庶民の笑った顔は、
なんとも健気で、美しく強く、魅力あるものでした。
そんな、汚れなき庶民に、メダルに勝る幸ある栄光があることを祈るばかりです。

祭典に集った各国の為政者たちが、
パフォーマンスの影に潜む“闇”の矛盾に目を向け、
世界の庶民に対して、やさしい「和」の善政を施してこそ、
オリンピックというものが、真の「平和の祭典」として光り輝くのではないでしょうか。


posted by 井上誠吾 at 12:50| 日記