2012年12月13日

続・60人組手


前回の続きから──

よし、やるぞッ!
と1人目に向かっていった。
その先には得体の知れない恐怖が待っていた!



1人、2人、3人、と対戦が続いていき、
5、6人目になった頃、早くも息が荒くなり、いっきにスタミナを消費した感覚に陥る!

なんだ? まだ始まったばかりだぞ、あと50人以上も控えているというのに、もう息切れか?
これでは、半分の30人さえも届かないで終わるかもしれないぞッ。

気合いを入れろ、気合いを!
己れを叱咤しつつ、全身に気合いを込める!・・・と、
「楽に行きましょう、まだ先があります」
と加藤和徳支部長が耳元で囁く。

その通り、先は長い、楽に行かないと倒れるぞ。
途中で倒れるなッ、醜態を晒すなッ。と己れにいい聞かせ、
和徳支部長のセコンドの声に従い、対戦を消化していく。

しかし・・・、
20人を越えた辺りから、1戦、1戦が、まるで地獄の様相!
次から次に戦う相手が、ゾンビのように奇怪に蘇ってくる。
今、こうして書いていて、ゾンビの表現は申し訳ないが・・・、
正直いって、次から次へと立ち現れる姿は、ゾンビ、そのものであった。

一匹、一匹のゾンビに・・・失礼、一人一人の対戦相手に、
全力を尽くして、最後まで倒れずに闘っていく!
それしかなかった。
ただ、それだけで、体を動かしていた。

しかし、
やがて・・・意識が朦朧としてきた。
何人までいったか、分からない中・・・
50人まで持たない、倒れるかもしれない、と薄い記憶の中で思っていたのは確かだ。
「井上先生、私の声が聞こえますか?」
はるか遠くから、新津先生の声が届いた。
「聞こえます」
と声になったかどうかは不明だが、頭を下げた記憶がある。

新津先生が心配してくれている。
気がつけば・・・、
主審の加藤邦顕関東本部長も目前で何やら励ましている。
横では加藤和徳支部長が氷で後頭部を冷やしてくれている。
足元でゴソゴソ蠢いているのは・・・、
ゾンビか? いや、都心で空手やアクションを教えている俳優の“うどくん”だろう。

整体師でもある彼は、「先生のお役に立ちたいです」と喜んでセコンドに付いてくれたのだが・・・、
息が苦しくて、パクパクしている小生の口にペットボトルの水をグイグイ入れて、溺れ死にさせようとしたり、
携帯酸素を吸いたい時にプッシュせず、息を吐いている時に顔面プッシュしたり・・・涙が出るほど有難い人物。

話を戻そう。
新津先生、加藤邦顕関東本部長、加藤和徳支部長、
ついでにゾンビ、あッ違った“うどくん”、そして、意識朦朧としている中、道場生の皆さんから「頑張って下さい」「行けます、行けます!」と励ましの声が届く。

よしッ、やるぞ!
と気合を入れようとした時、
「あと10人です!」
と、誰かの励ましの声。
え?・・・まだ、10人もいるの?
何も考えず、1戦、1戦を乗り切ろうとしたのに・・・、
10人!
ありがた迷惑、というのはこういうことだな、と実感!

「あと10人です!」
“善意”の声を、
「まだ10人もいるのか?」
“悪意”の声に変換してしまい、いっきに地獄の中!

しかし、やらねばならないッ!
最後まで、戦い抜かなければならないッ!
よし、やるぞッ。
その空気を読み取って加藤和徳支部長がセコンドから外れ、その加藤和徳支部長が外れたから“うどくん”も外れ、
戦場に一人立つ。

正直いって、立っているのが、やっとであった。
果たして、最後まで、闘えるのか?
意識が薄い中、
虚空に向かって、渾身の息吹を吐く!
吐き終わり、やる気を込めての不動立ち!
臨戦態勢に入った空気を加藤邦顕関東本部長が読み取り、
「正面に礼、お互いに礼・・・始めッ!」

残る10人!
地獄の扉が、再び大きく開かれた!
そこから、次から次へと、
鬼のような兵士たちが襲い掛かってくる!

体は持つのか?
最後まで立っていられるのだろうか?


To Be Continued

次回予告。
後日談で、“うどくん”が、
「50人過ぎた頃、先生死ぬぞ、と思いました」
「俺も、その頃、お前さんに溺死させられる、と思ったよ」
チャンチャン!

posted by 井上誠吾 at 11:33| 日記